映画の一刻 ~日常とシネマの旅~ 第12便『フリーダ・カーロの遺品 - 石内 都、織るように』2015.10.10sat – 10.16fri @シネマ5

大分の中心市街地、五番街にひっそりと佇む小さな老舗映画館、シネマ5
メジャーな映画ではなく、いわゆるミニシアター系の映画を上映している映画館だが、その映画選びは個性的。
一時期東京でも流行った、ファッション的要素の強いミニシアターではなく、どこか日本の奥ゆかしさを秘めている。
個性的な映画選びだが、ちゃんと幅広い層が楽しめるようにもてなしてくれる。

そして何より空間が素晴らしい。
そのシネマ5副支配人である大西さんにシネマ5&シネマ5bisで上映される映画の中で超個人的にオススメな映画を紹介して頂く、映画の一刻(ひととき) ~日常とシネマの旅~。

今回の旅は、『フリーダ・カーロの遺品 - 石内 都、織るように』
どうぞ、お楽しみください!

大西明美さんへのインタビュー記事はこちら。

 

第十二便『フリーダ・カーロの遺品 - 石内 都、織るように』

 

このドキュメンタリー映画の公開がシネマ5で決まっったとき、バイトスタッフの美大生に
「フリーダ・カーロが決まったよ。これは見ないといけないね」と言うと、そのスタッフは不思議な顔をしたので、「フリーダ・カーロは知ってる?」と念のため聞くと

「なんですか、それ」

と返ってきた。“それ”、人の名前だとは思っていない、、、
フリーダ・カーロを全く知らなかったのです。私はちょっと驚きました。
美術に興味のない人が知らないのはともかく、美大生が知らないなんて。。

気を取り直して、フリーダ・カーロの簡単な説明をして、「詳しくは自分で調べなきゃね」と強い口調になってしまった。それを横で聞いていた支配人がまるでフォローするかのように「眉毛が繋がってる女流画家だよ〜」と最後に付け加えた。

ーーーーーー

フリーダ・カーロは、メキシコを代表する女性画家です。
とても情熱的で、激しい悲しみを内に秘めそれをキャンバスに爆発させたような絵を描いています。

フリーダ・カーロは、女性だということを全身全霊で表現した人だと思うし、その生き方は私には真似できないほど壮絶で、だからこそフリーダ・カーロの絵は、20年くらい前の若い私には衝撃でした。

でも、今思うとそれも、あの時代の気分だったのかもしれない。

私が彼女を知ったのは、当時、東京で大々的に彼女の作品が紹介される展覧会があり(と思う)、美術系の情報番組や雑誌はこぞってこれを記事にしたからです。それによって、ブームのように熱狂的なファンが現れたのです。

そう考えると、今の美大生だろうがそうでなかろうが、知らないのは当然かもしれない。

ピカソもラファエロも、ダ・ヴィンチも、今や本物を間近で見る展覧会は少なく、それらを「常識として知っていること」を下敷きに、現代アートの展覧会が多く開催されているように思います。
でも、その下敷きになっていることのほうには全然触れることなく、最近は、そんな機会も展覧会もないとなると、基本的なことを知らないということはあり得ることかもしれません。

知ろうと思えばいくらでも知ることができる、調べることができる今という時代ですが、逆に多くの人々を飲み込むブームを作り出すのは難しく、それに飲み込まれながら時代を感じるということもない。
情報が溢れすぎている中で、自分で探し出会うしかない。

今は、知るためには努力が必要な時代かもしれません。

さて、本題です。
今回、案内する映画は、前段のフリーダ・カーロの遺した遺品を写真に収める、写真家 石内都の撮影風景を追ったドキュメンタリーです。

メキシコのギラギラとした太陽の下、褐色の大地に、真っ青に塗られた壁で覆われたフリーダ・カーロの家“青の家”があります。その“青の家”は、今はフリーダ・カーロ博物館となっているのですが、そこに公開されていない彼女の遺品がありました。それが死後50年たった2004年に、封印を解かれ公開されました。そして2012年、この遺品を写真に収めるプロジェクトが立ち上がり、その写真を撮るフォトグラファーとして石内都に依頼が来たわけです。

石内都は、原爆で亡くなった人々の衣服を撮った写真集、写真展「ひろしま」で、衣服を身につけていた人々を思い起こさせるような写真を発表しているアーティストです。大分県立美術館の開館記念のモダン百花繚乱「大分世界美術館」展でも、彼女の作品が展示されていたので、記憶している方も多いと思います。

その石内都がフリーダ・カーロの遺品を撮る。

それは、フリーダ・カーロが生きていた痕跡を撮るのか、それともそれを撮る石内都の人生が映り込むのか、それともその写真を見る人々のそれぞれの内なる記憶、その人生を問いかけようとしているのか…。

黙々と遺品を撮り続ける石内都を見ているうちに、じわじわと何かが自分の中に発酵してくる映画です。

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前段の話題に戻りますが、

本物は知っていたほうがいい。それは基礎になり人生を豊かにする。

この映画を見ることで、フリーダ・カーロも石内都も、メキシコの女性たちの生き方も、ついでにフリーダ・カーロの夫ディエゴ・リベラも知ることになります。

私の個人的な想いですが、
せめて映画で、知らせて、感じ取ってもらうのが、
映画館の役割の一つなのかも知れないと、この映画を通して考えさせられました。

その手伝いがほんの少しでも出来るならーーー。

『フリーダ・カーロの遺品 -石内都、織るように』
監督|小谷忠典
出演|石内都
配給|ノンデライコ
2015年/日本/89分
http://legacy-frida.info

【上映期間】
2015.10.10(土) – 10.16(金) 1週間限定上映

【上映時間】
毎朝9:40〜11:17(含・予告編8分)

【会場】
シネマ5
大分市府内町2丁目4-8
TEL 097-536-4512 / FAX 097-536-4536
オフィシャルサイト http://www.cinema5.gr.jp

アバター
大分の中心市街地、五番街にある老舗映画館、シネマ5の副支配人。

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