映画の一刻 ~日常とシネマの旅~ 第6便『百円の恋』2015.1.31sat – 2.20fri @シネマ5bis

大分の中心市街地、五番街にひっそりと佇む小さな老舗映画館、シネマ5

メジャーな映画ではなく、いわゆるミニシアター系の映画を上映している映画館だが、その映画選びは個性的。

一時期東京でも流行った、ファッション的要素の強いミニシアターではなく、どこか日本の奥ゆかしさを秘めている。

個性的な映画選びだが、ちゃんと幅広い層が楽しめるようにもてなしてくれる。

そして何より空間が素晴らしい。

そのシネマ5副支配人である大西さんにシネマ5&シネマ5bisで上映される映画の中で超個人的にオススメな映画を紹介して頂く、映画の一刻(ひととき) ~日常とシネマの旅~。

今回の旅は、「百円の恋」

どうぞ、お楽しみください!

大西明美さんへのインタビュー記事はこちら。

 

第六便「百円の恋」

 

2015年最初のシネマへの旅の舞台は、うんざりするほど普通の日常・・・そこへ目の覚めるような一撃!をくらう、これはもうすばらしい傑作です。
見終わって映画館を出る頃は駆け出したくなるくらい元気な気持ちになります。

32歳、実家の弁当屋の二階で毎日ぼんやりゲームばっかりしてダラダラした生活をする一子。しびれを切らした母親に追い出され、人生初の一人暮らしを始めることになります。何の取り柄もなくぼんやりニートしていた一子は、いつも立ち寄っていた100円ショップでバイトすることになるのですが、そこでも出会うのは、なんでもお安く手に入る、100円商品のようなチープさがつきまとう人たちや事柄ばかり。そして一子の日常もそんな感じ。
そのうち、いつもバナナばかり買いに来る男と付き合うことになりますが、すぐにその男は別の女に乗り換えていなくなってしまいます。男の消息を知るために男が通っていたボクシングジムを訪ねたのをきっかけに、なぜかボクシングを始めることになります。少しずつボクシングにのめり込む一子はプロテストを目指し始めるのですが・・・。

と、ここまで読んでも全然見たくならない、この映画。実際、この映画を見ていて中盤までちょっとダラダラぎみ「あー、いかにもシネマ5の映画っぽい。このまま最後まで終わりそー。」って、私でさえちょっと思ったほどですから。で、我慢できなくってここで寝てしまったりすると、ほんとにもったいないです。この前半のダラダラがジャブのように徐々に聞いてきて、最後はノックアウトです。間違いなく!

映画には最初の15分で傑作だとわかるものと、この『百円の恋』のように途中まで靄がかかったように進む(けれどどこか惹きつけられてもいるのですが)もので傑作!というのがあります。後者に出会うとちょっと嬉しいです。期待以上の体験をすることになるからです。
この作品の前半がジャブのように効いてくる演出と、主演の安藤サクラの見事な演技、本当に素晴らしい。映画の中で登場人物が変化していく、あるいは成長するのは、傑作である証拠でもあると思います。

とにかく、見逃さないで欲しい。始まったばかりの今年の作品の中でも突出した傑作になるはずです。この映画を見たなら、今年はきっといいことが起こると思います。

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ちなみに『百円の恋』を見て私は思いました。

ところで私は自分自身を、ちゃんと人生のリングの上にあげて、真正面から何かにぶつかったことがあるだろうかと。
すごく考えて見たのですが、思い当たらない。強いて言えばはるか昔、大学受験の時だっただろうか。毎日黙々とデッサンをして、第一志望の美大に合格するも金銭面と親の猛烈な反対で諦めた自分。でもあの日々は確かにリングに上がる日を目指していた。今となっては、それは何だったのか。そして、その後の私の人生の惰性続きはどうしたことだろう。何にも身を結んでいないように思われる。

ここいらで、そろそろ自分を奮い立たせなければならないと、こんな年になって、ここ数日、真剣に(かなり前向きに)考えている。

 

 

『百円の恋』
100yen-koi.jp/

【上映期間】
2015.1.31(土) – 2.20(金)

【上映時間】
2015.1.31(土) – 2.07(金)
10:00〜11:58   14:50〜16:48   19:40〜21:38

2015.2.08(土) – 2.13(金)
10:00〜11:58   14:50〜16:48   17:40〜7:38

2015.2.14(土) – 2.20(金)
11:45〜1:42   15:30〜5:27

【会場】
シネマ5bis
大分市府内町3丁目7−7
TEL 097-536-4512 / FAX 097-536-4536
オフィシャルサイト http://www.cinema5.gr.jp

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